頭 痛

北見病院 院長 平野 浩
(神経内科専門医)


先日の「頭痛、ふるえ、しびれ」をテーマとした医療講演では、約八十名の方に熱心に講演を聴いていただきましたが、この中で「頭痛」について質問をしたところ、今まで頭痛を経験したことの無い方は会場ではお二人だけ、また会場の約半数の方が頭痛のために医療機関を受診し脳CTや脳MRIの検査をしていることがわかり、頭痛で悩んでいる方が予想以上に多いことに少々おどろきました。


30〜40%の方が頭痛もち


 頭痛にも命に関わる急性頭痛―症候性頭痛(年間約3万人)と、命には関わらない慢性頭痛―機能性頭痛とがあります。

 日本で慢性頭痛で悩んでいる方は人口の30−40%とも言われ、また頭痛に要する年間医療費は3000億円とも言われます。

 さて、頭痛で受診する多くの方は「クモ膜下出血」や「脳出血・脳梗塞」を心配し脳の検査を希望なさります。
 その際、北見病院では脳CT検査を行います。

 しかし、この約十年間で「お一人で普通に歩いて来られ、普通に医師と会話をすることができ、普通に手足を動かせ何ら症状の無い」患者さんでは、ほとんどの方が脳CT検査では異常なく、たとえ異常があったにしてもその頭痛の原因とは成り得ない、もともとあった病変でした。

 逆に言うと、命に関わる頭痛―症候性頭痛である「クモ膜下出血」や「脳出血・脳梗塞」では、「一人で普通に歩いて来られない」「普通に医師と会話ができない」「手足の動きや感覚に何らかの異常を自覚する」など何らかの異常があると言えます。

 一見異常が無いように見えても専門的な診察を行うと、何らかの神経学的異常が見つかることがほとんどです。
 ですから、いつもと違う頭痛と感じたときには、医療機関を受診することが必要といえます。

頭はどこが痛むのか? 


 みなさんは頭が痛いと、すぐ「脳が痛い」と考えませんか。

 今から六・七十年ほど前のアメリカで、まだ全身麻酔が無く、局所麻酔で脳腫瘍などの開頭術を行っていた時代に、こんな話しがあります。

 全身麻酔をしていませんから、手術中も医師と患者さんは自由に会話ができます。ある手術で医師が開頭し、患者さんの脳の一部をピンセットでつまみ、「どうですか、痛いですか」と聞いたところ「先生、全然痛みなど感じません」と言ったそうです。

 そうです、脳は体の痛みを感じる中枢を持ってはいますが、脳自身は痛みを感じないのです。

 頭で痛みを感じるところは頭皮、硬膜、脳底部やその他の太い血管、頭部周囲の筋肉、脳から出る神経なのです(図―1)。

 次回は、多くの方が経験する頭痛―慢性頭痛と、命にかかわる頭痛である症候性頭痛についてお話を進めたいと思います。

頭 痛 その2 に続く