一人で悩まないで
「うつ病」について

北見病院 医師 加藤達也
現在、わが国の自殺者は年間三万人以上にも及んでいますが、その中には「うつ」の方も多く含まれていると考えられています。

しかし、「うつ」になった方の七十%以上の方は医療機関に受診していないともいわれています。

「うつ病」
どんな病気?
 
「うつ(うつ病)」とは、さまざまなストレス・過労・加齢等が引き金となり、脳内の感情・意欲等をつかさどる物質の量が低下して、「心身のエネルギー低下による生活の支障」が二週間以上続く病気です。]
この現代社会においては、だれにでも起こり得る病気です。

 一方、「(抑)うつ状態」という言葉もあります。これは、うつ病に限らず、広く様々な原因でうつ病のような症状が出ている状態を指します。(これも病気ですから、治療が必要です)

「うつ病」どんな症状が出るの?

 心身のエネルギー低下から、例えば下記のような症状が出てきます。もちろん、すべての症状がそろうとは限りません。

【精神症状】
「ゆううつ」な気分・物事への興味が楽しめない・絶望感・仕事や家事などが「おっくう」・気力が湧かない・決断や集中力が鈍る・記憶力が減退する・体の動きが遅く口数が少なくなる・「いらいら」しやすい・色々な事に不安が強くなる・強い罪悪感・「死」への思い など

【身体症状】
睡眠障害(途中で目が覚める、早朝に目が覚める、寝過ぎ)
食欲異常(食欲不振、過食)
体がだるい・疲れやすい
様々な部位の痛み(頭、眼、腰など)
下痢・便秘・発汗・息苦しさ・めまい など 
 
 症状は、典型的には「朝に悪化し夜に改善」という場合が多いようです。


「うつ病」
どうしたらよいか?
 
抑うつ状態は、様々な体の病気(甲状腺ホルモンの異常、脳腫瘍等)や薬(副腎皮質ステロイド、パーキンソン病の薬、胃潰瘍の薬等)が原因になって生じたり、精神科専門の他の病気に伴って起きてくることがあるので、まずは内科などで体のチェックが必要です。

 また、薬を使った治療も重要です。

うつ病の薬は依存性がありませんから、その時々の状態に合わせて十分な量の薬を使うことが必要です。

更に、薬が十分に効果を発揮するには、体だけでなく気持ちも休まる環境が絶対に必要です。

 きちんと治療すれば、90%くらいの患者さんが半年から一年以内に回復しますが、10%弱の患者さんは年単位の治療が必要になります。

 また、再発しやすい病気なので、症状が消えてからも半年から一年は薬を続ける必要があることも忘れないで下さい。
 
一人で悩まず相談を
励ましは禁物

うつ病は、気のせいや怠け病などではなく、自殺の危険性がある脳の病気です。

患者さんを励ましたり、気晴らしに誘うことは、心身のエネルギーが低下している患者さんを追い詰めることになるのでしないで下さい。

自殺の危険性は、病気になりかけと治りかけの時期に強まるので、心配な時は隠さずきちんと話題にして、「絶対に自分を傷つけることはしないでね。」と約束してもらうことも大切です。

また、退職や離婚など人生に於ける重大な決定は少なくとも病気が良くなるまではしないことです。

うつ病の人は、一人で頑張ってしまうことが多いため、気づかないことも少なくありませんが、病気の早期発見や治療には周囲の人の援助が必要となります。

精神科や心療内科を自分で受診する方も増えていますが、抵抗がある時や身体症状がある場合は、一般内科にまず受診してみるのも一つの方法です。

一人で悩まず医師や周りの人に相談をしましょう。