胃・十二指腸潰瘍の治療について

北見病院 医師 武田雄太
胃潰瘍とは胃の内部を裏打ちする粘膜に出来た傷のことです。欧米では十二指腸に、日本では胃に多くみられます。

主な症状は心窩部(みぞおち)の痛みで、特に空腹時に強く、食事後は軽快する傾向があります。食欲低下、吐き気、胸焼けもよく見られる症状です。

合併症で最も多いのは出血で、仮に吐血(消化管からの出血を口から吐くこと)が無くても、タール状の真っ黒な便は大量に出血している証拠であり、直ちに入院の上、治療する必要があります。

この他、頻度は少ないものの、潰瘍が深くなってすっかり穴が開いてしまい、腹膜炎となった場合は外科手術が必要になる場合があります。

胃酸・粘膜を守る力、ピロリ菌
 胃酸などの粘膜を攻撃する因子と、粘膜や胃・十二指腸への血流など粘膜を守る因子のバランスの崩れが原因と言われています。

十二指腸潰瘍では胃酸の出すぎが、高齢者の潰瘍では粘膜を守る力の低下が原因と言われています。

 また、二十年ほど前に胃の中から見出されたヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌とする)が、重要な攻撃因子として注目されるようになりました。

日本人の成人の七十〜八十%がこのピロリ菌をもっており、しかも年齢を重ねるほどその確率が高まっています。

ピロリ菌をもっている人全てが潰瘍を作るわけではありませんが、このピロリ菌を除菌することで胃・十二指腸潰瘍が再発しにくくなることがわかっています。

治療について
〈中断すると再発・悪化〉
 胃酸の分泌を強力に抑える薬がここ二十年程の間に揃い、ほとんどのケースでは外来診療でも比較的短期間に治療することが可能となっています。

薬物療法を開始すると約一週間で自覚症状がなくなりますが、ここで治療を中断すると潰瘍の再発・悪化や、難治化(治りにくくなる)の原因となるため、治療の間は胃内視鏡検査を定期的に行い、潰瘍の治り具合を評価しながら潰瘍が完全に治るまで薬を飲み続ける必要があります。

潰瘍から出血している場合は原則として入院し、食事・飲水を止めて胃・十二指腸への刺激を抑え潰瘍の治りを促します。この治療で改善せず出血が続くような場合は、内視鏡による止血治療が必要となり、潰瘍内部の出血源となっている血管を焼きつぶしたり、止血剤を注入したりする処置が必要となります。

〈ピロリ菌(+)の場合は除菌も有効〉
また、ピロリ菌については内視鏡での細胞検査ないし尿素呼気テストの結果がピロリ菌陽性で、かつ潰瘍があることを確認した後、抗生物質二種類と胃酸分泌を強力に抑制する薬を七日間続けて内服します。

治療終了後は一ヶ月以上空けてピロリ菌が消滅したか否かをみる検査(尿素呼気テスト)を行います。

除菌の成功率は約九十%ですが、除菌が成功した事例においても約十%程度に再発が見られます。

 潰瘍は、再発しやすい病気です。中断せず治療を続けることが大切です。最後に療養生活上の注意点を左上にまとめましたので参考にしてください。

療養生活上の注意点

1. 治療を中断しない。安定していても年一回は胃内視鏡検査を受けましょう。

2. 食生活は三食規則正しく、刺激物(極端に辛い物、炭酸飲料、強いアルコール飲料、濃いお茶・コーヒーなど)はさけましょう。

3. 煙草はやめましょう。(血流が悪くなり潰瘍の治りが遅くなります。この他、煙草は呼吸器病、心臓病など様々な病気の原因にもなります)

4. 他の病気で処方された薬、特にカゼ薬、熱さましの薬や鎮痛剤は潰瘍を悪化させる恐れがあるので主治医と相談ください。