不整脈―心房細動と脳梗塞

北見病院 院長 平野 浩

長嶋茂雄さん(元巨人軍監督)が脳梗塞で倒れた以降、北見病院の外来でも不整脈を自覚し受診に訪れる患者さんが多くなりました。

今回、長嶋監督を襲った不整脈―心房細動そして脳梗塞とはどのようなものか、どういうことに気をつけておけば良いのか、平野浩院長にお話ししていただきました。



心房細動と脳梗塞(脳塞栓)の関係

 新聞報道などを見ますと長嶋監督の脳梗塞は、不整脈の一種である心房細動が一過性に起き、これに伴い心臓の中に血液の塊ができ、それが脳の血管を塞ぎ(これを脳塞栓と言います)初期の意識障害、右片麻痺や言語障害を起こしたとされています。

病状はいわゆる脳卒中による麻痺や言語障害ですが、その原因は心臓病によるものと言えます。

 健康な方は、心臓の中の洞結節という場所から毎分六十〜八十回ほどの電気的信号が規則的正しく発生し、心臓のリズムとテンポをとっています。

 これに対し心房細動が起こったときは、心臓の心房という部分のあっちこっちから電気的信号が発生し、心臓のリズムがバラバラとなります(図1)。

 心房は文字どおり細かくふるえるように動くだけで充分収縮ができず中の血液がよどみ、さらに時間が経つとその血液が固まり、それが大動脈から頚動脈を通って脳の血管を塞ぎます。

 脳塞栓が発生し六時間以内ならカテーテルという細い管を血管に通し、詰まったところを解かす薬(血栓溶解剤)を流し治療できうる場合があります。
 また、発症二時間以内なら治療によって劇的に症状が改善することもあります。

 また、一度脳塞栓を起こすと一〜二週間以内に二回目、三回目の脳塞栓を再発する可能性があり、再発予防のために血液が固まるのをおさえる抗凝固療法や抗血小板療法といわれる内科的薬物治療を検討します。


7倍も脳梗塞の危険性アップ

 心房細動は、甲状腺機能亢進症や心臓弁膜症などの疾患に伴い発症する場合と、これといった基礎疾患が認められないにも関わらず発症する場合とがあります。

 後者の場合を非弁膜性心房細動と言い、これが近年年齢とともに増加傾向にあると言われています。

 心房細動が起きると脈はバラバラになり、「胸がおどるような感じ」がする方と自覚症状が何も無い人もいますが、高齢者や心臓の働きが弱い人では急激に血圧が下がり、ショック症状を来たし生死に関わることもあります。 

 また、心房細動を持っている人はそうでない人に比べ、二から七倍も脳梗塞を発症しやすいと言われています。ですから動悸や胸苦など心臓と関係した自覚症状がある場合は、早めの受診が望まれます。

 動悸や胸苦を感じたときは、自分で脈拍をとり一分間の脈の数(テンポ)と規則性(リズム)を見てください。
 このテンポとリズムが不整脈の診断に役立ちます。


心房細動の治療は

 心房細動の治療方針を決めるには、その心房細動が再発発作性か、何日以上も持続しているのか、脈拍数が速いかどうかなどを考慮し、緊急に入院治療が必要か外来治療でもよいかを決めます。

 また数年にわたって持続している慢性心房細動の場合でも年齢、他の病気の有無などにより無治療でよいか、何らかの薬物療法あるいはそれ以上の治療が必要かどうか検討します。

 薬物療法でも抗不整脈剤、抗凝固剤、抗血小板剤など多種であり、それらをどう使い分けるかは患者さん一人ひとりによって異なりますので、医師とよく御相談してください。
    

生活上の注意

 心房細動を持っている方は、仕事上でも家庭上でも規則正しい生活が必要です。
 過労や睡眠不足、また特に過度のアルコール摂取が心房細動を引き起こすきっかけになる場合がありますので注意が必要です。

最後になりますが長嶋監督の早い快癒を念願しお話しを終わります。