不眠と生活習慣とお薬 

北見病院薬剤科
主任 上牧 弘幸

「寝たいのに眠れない」という経験は皆さんも一度は経験したことがあると思います。
不眠症とは「眠れないことで苦しみ、翌日の社会生活に支障をきたす」,また、そのような状態が「週に3回以上で一ヶ月以上」続くことと言われていますが、そこまでではなくても不眠が続くというのはつらいことだと思います。

睡眠で悩んでいる人は多い

睡眠薬を使ったことがある方も少なくないと思います。
日本人の5人に一人は睡眠に関する悩みを訴えているそうです。
睡眠薬を常用している人も3〜5%いると言われており、加齢と共にその割合も増え80歳台以上では男性の約10%、女性の約20%が服用していると言われています。
不眠症の治療というと睡眠薬が一番思い出されると思いますが、原因や効果によっては抗不安薬や抗うつ薬も不眠の治療に使用されます。

最近、街の薬店でも睡眠薬のようなものが売られています。売れ行きはかなりいいようです。
でも睡眠薬は取り扱いが厳しく、病院でも14日分を超えては出すことが出来ないのに、処方箋もいらない薬店でなぜ?と思われる方もおられるでしょう。
正確には睡眠改善薬といわれるもので、その正体は、アレルギーの薬なのです。
かぜ薬やアレルギーの薬の副作用で眠たくなることがあるのは有名ですが、その副作用を逆手にとったものなのです。

まず、原因をつき止める

実のところ、不眠症の治療において睡眠薬の出番というのは二の次なのです。
まず、大事なのが不眠の原因を知ることで、それがわかればその改善が第一とされます。
でもなかなかそれは難しく、結局、睡眠薬となってしまうことが多いのですが・・・。

不眠の症状にもいくつかあって大きく分けると4つに分けられます(表1)

表1 不眠の症状

入眠障害・・・・寝ようと思って床についてからなかなか眠れない
中途覚醒・・・・トイレなどで目覚めもう一度眠れない
早朝覚醒・・・・朝早く目が覚めてしまう
熟眠障害・・・・ぐっすり寝た気がしない


そして不眠の原因もいろいろ考えられます。
環境による不眠・・・騒音、温度、明るさなど
心理的な不眠・・・・「眠らないと」という意識や「今日も寝られないのでは」という不安
病気による不眠・・・身体疾患―咳、痛み、かゆみ、頻尿など
       ・・・精神疾患―うつ、神経症、統合失調症など
薬による不眠・・・・気管支拡張剤や抗パーキンソン病薬など可能性があるのは多い
嗜好品による不眠・・コーヒー、お茶、タバコ、アルコールなど
夜、寝るためにアルコールを飲むという人も多いですが、アルコールは寝付くことはできても、浅い睡眠が多くなり中途覚醒や早朝覚醒が起こりやすく、体もあまり休まらないと逆効果であることが多いです。しかも薬よりも肝臓の障害を起こしやすく、依存も起こりやすく注意が必要です。

睡眠のしくみ

人の睡眠を調節する仕組みとして2つ考えられています。
ひとつは「疲れたから寝る」というしくみで、脳や体がより疲れているほど、深く長い睡眠が得られるというものです。
もうひとつは「夜だから寝る」という仕組みで、いわゆる体内時計というものです。
体内時計は25時間周期といわれており、このままではみんな時差ボケになってしまいますが、この体内時計は合わせることができます。
そのカギになるのが光です。
強い光、できれば太陽の光を浴びることで朝と認識し時計を合わせることができます。
この2つをしっかりそろえることが快適な眠りへの第一歩と言えるでしょう。

次回は、睡眠薬の種類と依存についてお話ししたいと思います。もし、不眠にお悩みの方がいましたら、診察の際に医師にご相談ください。



 前回は睡眠のしくみと、不眠症の治療ではその原因を知ることが大切であることを紹介しました。
今回は睡眠薬の種類と依存、そして自分でできる睡眠障害への対応についてお話ししたいと思います

精神的依存と身体的依存

薬局で薬の説明をしていると、「睡眠薬はクセにならないか?」という質問をよく受けますが、これがなかなか難しい質問なのです。
眠れない時に少ない量をそのときだけ使う分には、その心配はありません。しかし、長いこと毎日のように使っていると、「使わないと眠れない」と思ってしまう「精神的」依存と、薬を急にやめると動悸や手の震えなどがでる「身体的」依存のどちらも起こる可能性はあります。
ただ、最近のくすりは昔と違い、かなり安全にできていて、依存も起こりにくくなっています。
 もし、依存状態になってしまっても、ゆっくり減らしていったり、薬を変えていったりすることでその状態から脱することも十分可能です。

決められた使い方を守って

睡眠薬にも多くの種類があり、主に効果の続く時間の長さで分けられます
1.超短時間型―寝付きが良くない不眠に使用されます
2.短時間型―寝付きが良くない不眠や途中で目が覚めてしまう不眠に使用されます
3.中間型―途中で目が覚めてしまう不眠や朝早く起きてしまう不眠に使用されます
4.長時間型―朝早く起きてしまう不眠や、日中の不安などにも使用されます

時間が短いものほど、途中で起きたときや、寝る前などの記憶障害や依存が現れやすく、時間の長い薬ほど、翌日の倦怠感や眠気、転倒事故などが起こりやすい、などとそれぞれ短所もあるのでタイプに合わせて、きちんと決められた使い方を守って使用する必要があります。

よい眠りのために

最後に自分でもできる睡眠障害の対応、12のチェックポイントを紹介しますので参考にしてみてください。
日本人の5人に1人は睡眠に関する悩みを持っており、睡眠薬を使っている方も多くいます。
不眠でお悩みの方、睡眠薬を止めたい・減らしたい方は、気楽に医師にご相談ください。

1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
歳をとると必要な睡眠時間は短くなる、平均7時間、70歳以上では6時間

2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
就床前4時間のコーヒーや緑茶の摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング

3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする

4. 同じ時刻に毎日起床
早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる

5. 光の利用でよい睡眠
目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
夜は明るすぎない照明を

6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
運動習慣は熟睡を促進

7. 昼寝をするなら、15時前の20〜30分
長い昼寝はかえってぼんやりのもと
夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響

8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る

9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
背景に睡眠の病気、専門治療が必要

10. 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
車の運転に注意

11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる

12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
一定時刻に服用し就床
アルコールとの併用をしない