慢性閉塞性肺疾患 COPD  

北見病院医長
武田雄太


気づかないうちに
肺機能の低下が進行

慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)とは、従来「慢性気管支炎」や「肺気腫」と診断されていた、肺に空気が十分入らなくなり、呼吸機能が低下する病気の総称です。

慢性気管支炎は咽から伸びている気管が左右の肺に向かってさらに枝分かれした「気管支」の部分に慢性的な炎症が起こったもの。
肺気腫とはその気管支の先端でブドウの房のように連なっている「肺胞」が壊れたものを指します。

主な自覚症状としては以下のものが挙げられます。
▽坂道や階段を歩くと息が切れる。
▽風邪をひいたわけでもないのに常時咳や痰が出る。
▽咳がとまらない、息苦しいのがぬけない。
▽明け方になると息苦しくて目が覚めてしまう。

この疾患の最大の問題は、初期の段階では自覚症状がほとんど無く、患者本人が気づかないうちに進行する点にあります。
このため正しく診断され、治療を受けている人は潜在患者(推計で国内530万人)のうち約7%程度に留まり、大半は無治療で放置されているのが現状です。
 
COPDと喫煙との関連

 喫煙者の肺はたばこ含有成分のタールで真っ黒になり、肺胞は破壊され房が1つの大きな袋状に変化し、気管支の壁は厚く硬くなります。
こうなると血液に酸素が運ばれにくくなり、「陸にいながら溺れているのと同じ状態」になります。特に、息を吐き出しにくくなります。実際COPD患者の約9割は喫煙者なので「たばこ病」とも言われています。

しかし喫煙者全員がCOPDを発症するとは限りません。要因としては喫煙歴、喫煙本数の他、遺伝的な要因もあります。喫煙者の5人に1人がCOPDに罹患(りかん)することもわかっています。

たとえタール量が低いたばこを吸っても、一日の喫煙本数が少なくても体が欲するニコチン量を吸い込もうと、無意識に煙を長く深く吸いこむことになります。たばこの本数を減らすこと、軽いたばこに切り替えることは全く意味が無く、完全な禁煙が望まれる理由がここにあります。

 また喫煙者ばかりではなく、ほかの人が吸う煙による「受動喫煙」によってもCOPDは発症します。海外の研究では受動喫煙によってCOPDの発症リスクが約2〜5倍に上昇。そのリスクは受動喫煙を受ける程、更に上昇します。また、気管支喘息の発病や悪化の原因になることも明らかになっています。
 
 以上COPDの概略・原因についてお話しました。次回は検査・診断および治療についてお話します。




呼吸機能検査とCT撮影で診断

 一般的な健康診断では胸部エックス線検査が行われますが、初期や中期のCOPDは診断できないことが多いです。
肺活量などの呼吸機能をスパイロメトリーという装置で測定することで、現在の呼吸機能を判定します。これと併せて胸部CT撮影を行います。

治療は禁煙からスタート

@ 禁煙

 COPDに限らず、呼吸器疾患全般の治療は患者さん本人が禁煙出来ていることからスタートします。禁煙に踏み切るだけで、呼吸機能の悪化が抑制されます。

A 薬物療法

 COPDでは肺の空気の通り道(気道)が常時狭くなり、息を吐き出すことが困難になっています。これを改善するため薬物療法では気管支拡張薬が使われています。
薬剤は気管支局所に作用し副作用の少ない吸入薬が中心であり、それも近年改良され一日一回投与にて十分な効果を発揮するものが主流となっています。

B 呼吸筋リハビリ

COPDの治療では、息切れを改善させる薬物療法のほか、運動療法や理学療法を組み合わせた「呼吸リハビリ」をします。リハビリは最初は辛く毎日継続するという難しさがありますが、その効果は驚くほど高いものがあります。

C 在宅酸素療法(HOT ホット)

薬物療法を始めて数年経ってもうまくいかず、家の中での生活でも息苦しさが感じられるようになると、在宅酸素療法(HOT)が勧められます。

 在宅酸素療法とは、酸素を濃縮する機械や酸素ボンベを通して、鼻から体内に酸素を供給する方法です。COPDでは肺の気管支や肺胞が壊れてしまい、血液に酸素を運ぶことができなくなるので外から酸素を補わなければなりません。酸素吸入をすると臓器がスムーズに働くようになり、食欲が出たり症状が改善されたりなど、日常生活を快適に過ごせるようになります。

 携帯用の小型軽量ボンベもあり、ボンベを背負って釣りに行ったり農作業をしたり、カラオケ教室や旅行を楽しんだりと意欲的に生活できようになります。生存期間も確実に長くなります。医療費の負担は入退院をくり返すよりは軽いですが、1カ月2万円を超えるなど決して安くはありません。


 COPDと診断された方の9割は喫煙者で、たいてい診断される数年前から「最近、息切れがする」「呼吸しにくい」ことを感じていると言います。

しかし多くは「年のせいかな」「風邪をひいた」とそのまま放置しているため、治療を始めるころには病態がかなり進んでいるケースが多いです。

 病気を防ぐためには、まずたばこをやめること。そして気になる症状がある場合は早めの受診を心がけましょう。