アニサキス症

北見病院医師
草間敬司

アニサキス症は病院でもっとも多く遭遇する身近な寄生虫症です。これからの季節、ご自分で釣った鮭やマスを刺身で食べるのを楽しみにしている方も多くいらっしゃると思います。そんなときに気になるアニサキス症についてお話します。

魚介類を寿司や刺身で生食する習慣のある日本では、アニサキス症の発生は諸外国に比べて非常に多いです。

アニサキス症がよく発生する時期は一般的には12〜3月の冬が多く、7〜9月の夏に少ない傾向があります。

これはアニサキスの感染源となる魚の漁期に関係していて、北方ではタラ、オヒョウ、その他の海域ではサバ、イワシなどの漁獲期がこの時期である事と関係があります。
アニサキス症の主な感染源

サケ・マス・オヒョウ・キュウリウオ・イワシ サバ・カレイ・アジ・ホッケ・スジコ・タラ・ソイ・マグロ・ イカ・ヒラメ・ハマチ


 日本の近海産の魚とイカを調査したところ、150種以上がアニサキスの幼虫を持っているとの報告があります。

アニサキスの一生

アニサキスの成虫は、クジラやイルカ、又はアザラシなど海に住む哺乳類の胃に寄生しています。

その虫卵は糞便とともに海中に放出され、オキアミなどに食べられて幼虫に発育します。

幼虫を宿すオキアミを魚やイカが食べ、その体内で幼虫のまま留まって寄生を続けます。

そしてこれらがさきほどの海の哺乳類に食べられると、幼虫は胃内で成虫となり、アニサキスの一生は完結します。

ところが、本来寄生するさきでないヒトがこれらの魚やイカを生食した場合、幼虫は生きたまま摂取され、胃や腸の壁に侵入してアニサキス症を発症します。この幼虫はヒトの体内で寄生し続けることはできません。

診断のポイント
 生鮮魚介類を食べたあとの腹痛

 ヒトに摂取されたアニサキス幼虫が、胃や腸などの粘膜にかじりついた時にアニサキス症がおきますが、原因となる食品を食べた後2時間から8時間で発症するものが多く、心窩部(みぞおち)に差し込むような痛みが起きて、それが持続します。

また嘔気、嘔吐をともなう場合もあります。また、まれに粘膜を突きやぶって消化管以外の臓器に侵入することもあります。

 診断は、生鮮魚介類を食べた後に起きた腹痛という事がポイントになります。疑った場合は胃内視鏡によりアニサキス虫体を確認して摘出します。

摘出したとたんに痛みはすーっとなくなることが多いです。



予防は
生食を避け加熱または冷凍

 アニサキス症はたとえ幼虫一匹でもおきる可能性があります。

予防は海産魚介類の生食を避ける事につきます。

また、アニサキス幼虫は熱処理(60 ℃1分以上)のみならず、冷凍処理(マイナス20℃)でその殆どが死んでしまうことが知られています。

そのため欧米では、生食用の魚について、一定レベルの冷凍処理を勧告あるいは義務づけている国が多くあります。

 でも、旬の生の刺身などはとてもおいしいですよね。「わさび」や「からし」では、アニサキス症の予防効果は期待できませんが、食べる前によく観察すること、イカなどは細かく切れ目を入れることで予防できることもあります。