認知症の非薬物治療

北見病院 
院長 富田薫



厚生労働省の発表によると、認知症患者は2025年には700万人、現在の1.5倍になり、65歳以上の3人に1人が認知症患者とその予備軍ということになります。
最近日常診療している中で、患者さんのご家族が「物忘れが目だってきた」「認知症ではなか」といったことを相談してくるケースが増えていると感じます。
今回は認知症の非薬物療法についてお話しします。

薬物療法を行うことで認知症の進行を抑えたり、脳の機能低下を遅らせたりすることは出来ますが、残念ながら認知症を完治する方法は現在の医学にはありません。
薬物療法やリハビリテーションと並ぶほど重要な役割を果たすのが、非薬物療法や家族のケアといわれています。
いくつかある非薬物療法のうち3つを紹介します。

ユマニチュード
 見る、話しかける、触れる、立つという4つの方法が柱となって、150もの技術があります。

○ 見る〜正面から目の高さを同じにして見ることで、対等な関係であることを感じてもらいます。
○ 話しかける〜優しく、前向きな言葉を使って、くり返し話しかけます。
○ 触れる〜体に触れてスキンシップをはかります。腕はつかむような感じではなく、そっと手を添えるようにしたり、背中をさすったりします。
○ 立つ〜自力で立つことを大切にします。筋力の低下を防ぐことと、視界を広げ、頭に入る情報を増やすことができます。

パーソン・センタード・ケア
 認知症の方を一人の"人"として尊重し、その人の視点や立場に立って、その人を理解してケアを行います。
認知症の方がどう感じているかを介護する周囲の人が理解し、その人を支えようとする気持ちを大切にする"人中心のケア"です。

バリデーション療法
 バリデーションとは元々「確認する、強くする、認める」の意味に用いられる言葉です。
開発者は「経験や感情を認め、共感し、力づける」意味で用いています。
認知症の方が騒いだり、徘徊することに「意味がある」と捉え、なぜ騒ぐのか、なぜ徘徊するのかをその人が歩んできた人生に照らして考えたり、共に行動したりします。
「共感して接する」ことに重点を置いた療法です。

 これらの非薬物療法を実践するには専門的知識や訓練が必要になります。
しかし、認知症の方のそばにいるご家族や周囲の人たちが、こういった治療法があることを知っていることや、認知症を理解し、あたたかい姿勢や気持ちを持って接することが認知症になっても安心して地域で暮らせることにつながると考えています。

認知症介護 家族の接し方の10か条

1.【なじみの関係】 顔なじみ落ち着き与える安心感

2.【心の受容】意に添ってこころ受け止め温かく

3.【心のゆとり】怒らずに相手に合わせるゆとり持つ

4.【説得より納得】理屈より気持ちを通わせ納得を

5.【意欲の活性化】本人を生きいきさせるよい刺激

6.【孤独にしない】寝たきりや孤独にしない気づかいを

7.【人格の尊重】プライドやプライバシーの尊重を

8.【過去の体験は心のよりどころ】本人の過去の体験大切に

9.【急激な変化を避ける】環境の急変避けて安住感

10.【事故の防止を】事故防ぐ細かな工夫気配りを

出典:財団法人認知症予防財団