熊本・菊陽病院精神科  赤木健利
 (全日本民医連編集「いつでも元気」No.142 2003年8月号から転載)


■ アルコールは危険な「薬物」   ■  飲酒に甘い日本社会

アルコールは、「お酒」とか「ビール」などと呼ぶと、なんだか楽しい安全な「飲み物」のように響きます。
ほどほどに用いると、確かに楽しい飲み物かもしれません。
しかし実は、依存性が強く、「麻酔薬」として効果がすぐに現れる危険なもの。
決して安全な物質ではありません。

アルコールの害

アルコールの害は、@急性中毒、A依存症、Bそして依存症に陥った結果おこる慢性の中毒にわけられます。
また、精神障害、身体障害、社会生活上の障害と、人の生活のすべての面におよびます。

@急性アルコール中毒
体内のアルコール量が血液100ミリリットルあたり200rを超えると急性アルコール中毒になる危険性があります。
中毒とは「毒に中(あた)る」という意味です。
急性中毒になると、アルコールの麻酔作用によって脳全体がまひし、つねっても目を覚まさないくらい意識がなくなったり、呼吸や体温をコントロールする機能がまひするなど、精神中毒がおきます。
また、アルコールが分解されて生じたアセトアルデヒドが体内にたまり、頭痛、嘔吐(おうと)、二日酔いや、血液が酸性にかたむくアチドーシスになり、内臓が機能不全に陥って、最悪の場合、死に至ります。

Aアルコール依存症
アルコール依存症は、中毒ではないのですが、なんとしてもアルコールを手に入れようとする行動が出てきたり、アルコールが切れると不眠、悪夢、手指のふるえ、白律神経失調症状、情緒障害などがおきたり、ひどくなると幻覚、妄想、けいれん発作などがおきるようになるとアルコール依存症と診断されます。

B慢性アルコール中毒
アルコールが切れたときに、手指のふるえ、せん妄(意識が混濁し、激しい興奮状態や不安状態におちいる)、やアルコールパラノイア(アルコール性妄想症)、コルサコフ精神病(数分前の記憶がなくなったり、時間や場所がわからなくなる、作話をする)、アルコール性痴呆などの精神中毒症状が出てくる状態をいいます。

どんな障害がおきるか

●身体の障害
身体障害はいろんな臓器におよびます。肝臓やすい臓の病気は高い割合で合併します。ほかに糖尿病、高血圧、血液疾患、骨など整形外科疾患、性的インポテンツなどが多い。
がんの発生が多いことも知られています。私たちの経験では胃がん・大腸がんのほか、口腔や上気道のがんが多いことに注目しています。
早老や早死も特筆すべきことです。依存症患者の平均死亡年齢は52歳といわれています。

●精神障害
精神中毒は急性中毒、慢性のところで述べたほかに、性格異常が出てくること、「魂の死一生命の尊さが感じられなくなる)」であることも重要です。
治療は生き方そのものを変えることになるからです。50代の若さで痴呆になることもあります。

●社会的障害
アルコールが原因で、大切な家庭や職場が崩壊しかねない事態に。
親のアルコール依存が、家庭内暴力、児童虐待などの温床になります。
また職場を追われ職を探すことが困難になります。
交通犯罪や暴行、殺人などもアルコールに関連しているケースが多いのも事実です。

アルコール障害の予防

予防には3つあります。

第一次予防は中毒や依存症発生の予防(家庭や職場における学習啓蒙活動)、第二次予防は、病気が発生した場合の早期発見早期治療、第三次予防は、病気が進行した場合、治療とリハビリテーションを行ない再発や悪化を予防する、という考え方です。

治療には、白助グループ参加や専門病院への定期的通院が欠かせません。これには家族や職場の理解と協力が必要です。

リスクの少ない飲み方13条

@まわりも白分も楽しくなる雰囲気のときだけ、飲むようにしましょう。

A一日量は清酒換算-合以下に。

B「ある条件があると必ず飲む」という「習慣」は避けましょう。

仕事が一段落したら飲む、毎日晩酌をする、いやなことがあったら飲むなどは習慣化しやすく、習慣になると変えにくくなるものです。

C定期的な検診をうけましょう。とくに肝臓・すい臓の機能、高脂血症、腎機能、電解質などを調べておきましょう。

Dまわりから依存症を疑われたら、専門病院に受診して早めに相談。

E「薬」がわりに飲まない。睡眠薬がわりとか、ストレス発散やうさ晴らしになどのために飲むと、自分にとって「なくてはならない薬物」になってしまいます。

F週に最低3日間の休肝日(飲まない日)をもうけましょう。
月曜=マンデーは飲まんでー-などと語呂合わせをして月曜を飲まない日に決めるのもいいですね。

G夜12時以降は飲まない「シンデレラタイム」をまもりましよう。

H依存症と診断されたら、断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス。アルコール依存者の会)を大事な日課として定期的に出席しましょう。

I家系にアルコール依存症のあるひとは飲まないようにしましょう。

Jフラッシャー(アルコールを分解する力が弱く、すぐ赤くなるような人)はなるべく飲まないようにしましょう。分解する酵素の少ない人が飲むと身体障害がおこりやすいので危険です。

Kアルコールは20歳を過ぎてから。若年層はアルコール耐性ができておらず急性中毒になりやすい。また若い人ほど依存症に陥りやすいのです。

L妊婦はなるべく飲まないようにしましょう。アルコール性胎児症候群がおこるおそれがあります。

日本は飲酒に甘い国

日本は世界のどの国と比較しても、アルコールの害に対して過度に寛容で警戒心の低い国です。
国によっては禁酒法で取り締まられていたり、多くの国は反道徳的な飲酒行動を規制してます。
日本では飲酒運転の取り締まり以外はアルコールに対して異常に甘い。テレビでは終日宣伝し、白動販売機でも売られ、最近はコンビニで時間無制限で販売しています。こんなに無警戒な国は他にありません。
アルコールの害を防ぐために、社会的な規制が求められます。