放射線技師 黒澤 久司

■ 放射線の話 ■
 「つい先日、レントゲン写真を撮ったのですが、体に影響ありませんか?」と検査のときに良く質問されます。
 結論から言いますと、「まったく心配いりません」となります。
 原子爆弾や原子力発電所関連施設の事故、そしてガンの発生など多くの方が「放射線」や「放射能」といった言葉に不安を感じることと思います。

 専門家なみの知識をもつ必要はありませんが、病院でも放射線を使った検査(レントゲン検査・CT検査)などに接しますので、少しお話しをしたいと思います。

▼   
放射線と放射能は同じ?
 放射線と放射性物質の関係については、しばしば光と電灯の関係に例えられます。電灯から出る光が「放射線」であり、電灯が「放射性物質」となります。
では、放射能とはなんでしょうか。

 放射能とは、放射性物質が放射線を出す能力または性質のことを言います。電灯でいうと明かりを灯す(出す)能力と考えればよいと思います。
 よく新聞報道などで「放射能をあびた」という表現がありますが、これは正確には正しいといえません。
 
 放射性物質が付着した場合は、「汚染された」。また、放射線をあびた場合は、「被曝(ひばく)した」といいます。「ばく」は、原子爆弾などによって放射線にさらされた場合は被爆と漢字を使い分けています。

放射線は光と同じ?
 病院のレントゲンなどで使われているエックス線(X線)は光と同じ電磁波の一つで、すべて電気で作られます。
 3万ボルトから13万ボルトといった高圧電線と同じような電圧で、電子を特定の金属に当てることによってエックス線がでます。
 ですから、常時放射線が出ていることはなく、スイッチを押したときだけ、必要な分だけ出る仕組みとなっています。

放射線は自然界にもたくさん
 放射線は病院のレントゲン機械のように人工的に作ることも出来ますが、自然界にもたくさん存在するものです。
 宇宙には宇宙線(宇宙船ではありません)という放射線が飛び回っていて、天体の観測などに利用されています。
 その他、地上にもともとある放射性物質があり、日本人が一年間に受ける放射線の線量は1.5ミリシーベルト程度といわれています。

無用な被爆はしないが原則
 自然界以外からの放射線を人口放射線といい、
@医療による被曝、
A職業による被曝、
Bその他原子力、核実験などに大別できます。

 医療による被曝は、レントゲン検査やCT検査などで受ける被曝のことで、年間2.2ミリシーベルト(日本人の平均値)程度といわれています。
 職業による被曝とは、医師や放射線技師が検査などのために受ける被曝のことで年平均0.2ミリシーベルト程度となっています。

 放射線の影響は、全てが解明されたわけではありませんが、どんなに少ない量であっても発ガンや遺伝への障害が起こる可能性があると考え(逆の学説もありますが)、「無用な被曝はしない」「必要な被曝でも最小限に」を基本としています。

危険度と利益を天びんに
 病院では、放射線を受けることによるリスク(危険度)と検査をすることによって得られる利益を天びんにかけ、利益が十分にあると判断した場合のみ検査を行うことを基本としています。

 病院で受ける放射線の被曝線量は極々少量であり、毎年胃のバリウム検査をしても、肺炎のために胸部写真を何回とっても体に与える影響は心配ありません。身体的影響で言うと、一回の検査はタバコ一本のリスクよりずっと少ないといわれています。

 ただし、妊婦や小児の生殖腺などについては、安全性を最優先に考え極力被曝しないようにすることが基本となっています。

 放射線技師は、放射線を使った検査の専門化として、「放射線の量は最小に得られる情報は最大に」を目指しています。被爆のことや検査で不安なことがありましたら、遠慮なくお尋ねください。

 最後になりますが、放射線や放射性物質は正しい知識を持ち、絶対安全での利用が原則です。人類の生命に影響を及ぼす核兵器、安全性の確立していない原子力施設の利用は直ちに止めなければと考えています。


放射線の被曝線量
胸部レントゲン           1回約0.05ミリシーベルト
胃バリウム検査          1回約0.6ミリシーベルト
東京ニューヨーク航空機旅行  0.19ミリシーベルト
医療による被曝の平均(日本) 2.2ミリシーベルト/年
自然放射線による被曝(日本) 1.5ミリシーベルト/年
   〃     (ブラジル)  10ミリシーベルト/年